初夢
リッツ
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- 2000年1月1日は、Y2Kと騒がれていた様な事はなにも起こらず、日本・世界各国無事に迎える事が出来たと言って良いだろう。ただ一部の人を除いては・・・
- 「おはよう、舞ちゃん。新年あけましておめでとう」
- 「おはよう、翔ちゃん。おめでとうございます。今年もよろしくね」
- どこの家庭でも交わされる、ごく当たり前の新年の挨拶。それは、迦楼羅神教38代目教主である扇翔子・舞子姉妹でも同じであるが、この朝は何か様子が違っていた。
- 先に口火を切ったのは舞子の方だった。
- 「翔ちゃん。どうしたの?変な顔して・・・」
- 変な顔とは例えの話し。どんなに歪ませても均整のとれた美しい顔を持つこの姉
- 妹が“変な顔”になる事はまず考えられない。翔子は舞子の顔を見るなり、首を傾げ、眉をひそめて何かを考えている様だった。
- 少し考えた後、翔子はもっとも信頼できる人、双児の妹に話す事を決めた。
- 「あのね、別に大した事じゃないんだけど・・・変な夢を見ちゃって・・・・」
- 「あー、あたしも見た!変な夢!後で翔ちゃんに話そうと思ってたんだ」
- 「舞ちゃんが見た夢てどんな夢?」
- 「翔ちゃんから先に話しなよ」
- 翔子は取りあえず、粗筋だけを簡単に説明した。
- 「あたしと舞ちゃんとおばあちゃん、剣持さん、それに近江くんと錦織さん・・・と他数名と酒盛りをしてる夢なんだけど・・・」
- 「その他数名て、魅冬や冬樹、辰王や柊さんそれに近江くんのお母さんまで居なかった?」
- 「・・・・・・・・・・・・当たり」
- 二人で夢の詳細について話し合った。どうやら二人は全く同じ内容の夢を見ていたらしい。よくある話。仲の良い双児は、仲良く同じ夢を見ていたのでした。チャンチャン
- で、済む訳がなく・・・・
- 「変と言えば、変だけど面白い夢じゃない。みんなで酒盛りして、騒いで」
- 「ただの夢なら良いけどね。何か陰謀の様な物を感じるんだけど・・・」
- 脳天気な舞子と心配性の翔子。二人を足してニで割るとちょうど良いのだろうが、これがこの二人の良い所でもある。
- 「翔ちゃん、それ絶対考え過ぎだって!そりゃ、剣持さんが女になるとか、普通じゃ考えられない様な事もあったけど」
- 「・・・・・・・・・・・・・」
- はっと気がつくと舞子の言葉に絶句、と言うより硬直、いや凍り付いていると言った方が適切かもしれない翔子が目に付いた。同じ夢でも翔子はそこまでは見ていなかったらしい、幸いにも。
- 「もしも〜し。翔ちゃん大丈夫?」
- およそ大丈夫とは言えない状況下。どんな強敵より強い舞子の一言。(爆弾発言は翔子の十八番なのに)そんな事に気が付かないのか、舞子が余計な一言を付け加えた。
- 「でも、翔ちゃんだって、叫んだ後『でも剣持さん、きれーだよ』て言ってたじゃん」
- 「言う訳ないでしょう!!!絶対、誰かの陰謀よ!そうに決まってる!」
- 家中に響くような大きな声。家内の者が誰の声か気づくのに数分の時間を要するほど、翔子にしては意外な声だった。
- その後、柄にもなく翔子は一日を荒れてすごした。
- 荒れた翔子なんか想像出来ない?そうでしょう。書いてる私も想像出来ません。
- 翔子の様子を見て残念がっている人物が、扇家で一人。双児の祖母である扇千景さん。お年寄り、もとい、早起きの千景さんには珍しく、朝寝坊をして長い夢を見ていた。
- 「面白い夢の話をしてやろうと思ったのに・・・翔子に起こされなければ、続きがあったかも知れんなあ」
- 一方、同じ頃、剣持邸では。
- 「ひどい夢だった・・・」
- この家の主人である剣持司は、起き抜けに独り言を言って、ホッとしていた。初め
- は良かったが、途中から女にされたり呪詛(?)で言葉が出なくなったり散々な夢から覚めた所だった。
- ふと周囲を見ると、昨晩と言うか今朝方、ミレニアムの新年を祝って仕事明け直後の錦織と未成年の近江とが、しこたま飲まされ、つぶれて眠ったままでいた。
- 近江の顔を見るなり、剣持は
- 「嬉しそうに。良い夢を見てるんでしょうね」と、自分の見た散々な夢を思い出してぼやいたりするあたり・・・・(以下自主規制)
- ぼやきながら近江の顔を見ていると、喜んだり怒ったり赤面したりと、まるで百面相を見ている様。
- 「ふーんこれは面白い。目を覚ましたらどんな夢を見ていたのか聞いてみましょう」
- まだ目覚めない。近江・錦織の夢はどこまでも続く。新たなキャストを加え、何処まで続くかこの話、いや、この陰謀は・・・・?