童話シリーズ 『眠れる森の美女』

りん


昔々あるところに悪い魔法使いに魔法をかけられ眠らされた双子の美しいお姫様がいました。

1人は翔子姫、色白で艶やかな黒髪のお姫様です。
もう1人は舞子姫、栗色の髪がサラサラとなびくお姫様です。

ある時2人の王子が姫を目覚めさせようと危険を承知で森の中に入っていきました。

「近江君、本当にこの奥に美しい姫が眠っているんだろうね。」

白頭巾を被った王子が言いました。

「魔法使いの剣持さんからの情報だからね、間違いないさ。ところで白妙、体調は大丈夫なのか?」

近江と呼ばれた王子は心配そうです。

「大丈夫、最先端のアメリカでの治療を受けたんだ。ノープロブレムさ。」

白妙と呼ばれた王子は爽やかな笑顔で答えました。

森を進んでいくとお城に辿り着きました。
お城を取り囲んでいるイバラを剣で切り落とし、奥へ進んでいくと姫達のベッドルームに着きました。

「「美しい…。」」

2人の王子の声がハモりました。

「近江君、どうしたら姫は目覚めるんだい?」

白妙王子は鼻息荒く聞きました。

「えっと、剣持さんからの情報では…」

近江王子は魔法使いから渡された手紙を読みました。

【姫を目覚めさせるためには熱い口づけを…】

近江王子はそこまで読んで鼻の穴から勢いよく鼻血を噴き出しました。

「く、く、く、口づけ〜!?白妙、どうしよう!!」

鼻の穴にティッシュを詰め込みながら近江王子は振り返りました。

「!!」

そこには迷うことなく翔子姫に口づけする白妙王子の姿がありました。

「まあ、王子様。目覚めさせてくれてありがとう。」

翔子姫は起き上がると白妙王子にお姫様抱っこをされさっさと去っていきました。

「よ、よし。俺も…。」

近江王子は意を決して舞子姫に顔を近づけました。
栗色の髪、健康的な肌、長い睫毛…ドストライクな美しさに近江王子はまたもや鼻血を噴き出しました。

「ダメだ、俺にはできん…。」

ティッシュを詰め直しながら近江王子はため息をつきました。
そしてすうすうと気持ち良さそうに眠る舞子姫をいつまでも見つめていましたとさ。

(おしまい)