りん |
ここはカルラ心療内科。心に悩みを抱えた迷える子羊逹の駆け込み寺。 「次の方、お入りください。」 看護師に呼ばれ患者は診察室に入った。 「池田近江さんですね。今日はどうしましたか?」 青年は重い口を開いた。 「俺は父親違いの兄さんより強くなりたいんです。」 「詳しく教えて下さい。」 翔子先生の言葉に青年は続けた。 「兄さんはある一族の頭領の息子です。生まれながらに強いチカラを持っています。俺も母さんの血をひいているので少しは闘えます。ですが兄弟喧嘩になると全く歯が立たないんです!!」 「どうして喧嘩になるのですか?」 「兄さんは母さんを悲しませてばかりです。母さんは兄さんを庇って根は悪くないと言うんですが、俺はそれが許せないんです。」 翔子先生は少し考えて青年を見つめた。 「もしかしてそれはお兄さんの愛情の裏返しなのではないですか?素直に愛情表現できない人はその様な態度をとってしまうことがよくあるのです。もしそうだとしたら喧嘩をする必要はないのでは?」 青年は目から鱗が落ちたように表情を明るくした。 「そうか、兄さんはいわゆるツンデレなんだ!!母さんが兄さんを許してるのはそれを知ってるからなのか!!」 青年は今にも踊り出しそうに歓喜した。 「先生、俺は兄さんの一面しか見ていないことがわかりました!!」 翔子先生は笑顔で頷く。 「念のために母の字が彫られた鬼礫を一週間分処方します。もし喧嘩になったらそれを使って下さい。また調子が悪かったらいつでも来て下さいね。」 青年は翔子先生が処方した薬を手に意気揚々と帰っていった。 今日もカルラ心療内科は忙しい、迷える子羊逹を導くために…。 (終) |