カルラ心療内科(4)

りん


ここはカルラ心療内科。心に悩みを抱えた迷える子羊達の駆け込み寺。
今日も翔子先生は忙しい。

「次の方、お入りください。」

看護師に呼ばれ患者は診察室に入った。

「池田近江さんですね。今日はどうしましたか?お兄さんの件でまた何かあったのですか?」

青年は重い口を開いた。

「兄さんの事は落ち着きました。俺、好きな子がいるんですがその子は食べ物しか興味がないみたいで…全然進展しないんです。」

「詳しく教えて下さい。」

「その子とは随分前に知り合いました。合気道をやっているとかですごく強くて頼りになるし、なんとかという集団の代表もしています。とにかくすごい奴なんです。一緒に仕事をする時はペアになることが多くて、あいつにとって俺はかけがえのない存在だと思っていました。」

「素敵な女性なんですね。」

「そんな奴だから俺も尊敬していたしかけがえのない仲間だと思っていました。最近それが愛情に変わってきたんです。でも…。」

青年はため息をついた。

「あいつは俺よりもネギミソのおやきに魅力を感じているんです!!俺だって奈良にいる時はミステリアスな雰囲気で通っていたし、ファンクラブもありました!!でもあいつにとって俺はネギミソ以下なんです!!」

翔子先生は少し考えて青年を見つめた。

「もしかしてその方はまだ恋を知らないのではないでしょうか。恋を知らない女性は感情の機微に鈍感な事が多いようです。あなたが他の誰かに告白されたりしたらその存在の大きさに気がついたりするのではないでしょうか。」

青年は目から鱗が落ちたように表情を明るくする。

「そうか!!まだあいつは恋を知らないんだ!!俺だって最近まであいつに対する気持ちが恋だなんて気づかなかったもんな!!」

青年は今にも踊り出しそうに歓喜した。

「俺はまだネギミソに負けたとは限らない!!勝負はこれからなんだ!!」

翔子先生は笑顔で頷く。

「念のために岡山での呪詛払いの依頼書を処方しましょう。命がけの仕事になりますが、ものすごくよく効きます。また調子が悪かったらいつでも来て下さいね。」

青年は翔子先生が処方した薬を手に意気揚々と帰っていった。

今日もカルラ心療内科は忙しい、迷える子羊逹を導くために…。

(終)