りん |
ここはカルラ心療内科。心に悩みを抱えた迷える子羊達の駆け込み寺。 「次の方、お入りください。」 看護師に呼ばれ患者は診察室に入った。 「扇舞子さんですね。今日はどうしましたか?」 ポニーテールの似合う女性は重い口を開いた。 「あたしなんだか変なんです。胸がモヤモヤして…病気なんでしょうか。」 「詳しく教えて下さい。」 「初めにモヤモヤに気付いたのは仕事中でした。ケガをして病院にいる時に感じたんです。こんなの初めてで…。」 女性はため息をついた。 「実は仕事仲間が女の子から告白されているのを立ち聞きしちゃって…。その子は小柄で家庭的だし素直で可愛らしい子なんです。初めは2人を応援しようと思ってました。でも何だかスッキリしなくて…。その男の人が告白を断ったと聞いた時は何だかすごくほっとしたんです。これって胸のモヤモヤに関係してるんでしょうか!?」 翔子先生は少し考えて女性の目を見つめた。 「それはきっと恋だと思います。あなたはその男の人に対して特別な存在として意識しているのではないでしょうか。」 女性は目から鱗が落ちたように表情を明るくする。 「そっか、これが恋…恋なんですね!?あたし男の人に恋をするのは初めてなんです!!」 女性は今にも踊り出しそうに歓喜した。 「あたしその人と一緒に子どもたちに拳法を教えたいと思っていたんです!!早速、この気持ちを伝えたいと思います!!」 翔子先生は笑顔で頷く。 「念のために聖徳太子に縁ある神社までの地図を処方しましょう。その方と一緒にお参りしてみて下さい。ですがくれぐれも魂の入れ替わりには注意して下さい。また調子が悪かったらいつでも来て下さいね。」 女性は翔子先生の処方した薬を手に意気揚々と帰っていった。 今日もカルラ心療内科は忙しい、迷える子羊達を導くために…。 (終) |