カルラ心療内科(6)

りん


ここはカルラ心療内科。心に悩みを抱えた迷える子羊達の駆け込み寺。
今日は翔子先生がお休みなので千景院長が診察を行っていた。

「次の方、お入りください。」

看護師に呼ばれ患者は診察室に入った。

「白妙さんじゃな、今日はどうしたのじゃ。」

白頭巾を身に付けた爽やかな青年は重い口を開いた。

「俺、難病を抱えているんです。今の医学では根治は難しくアメリカでの治験を受けています。実は日本に恋人を残しているのですごく心配なんです。」

「詳しく話すがよい。」

「彼女は色白で黒髪の美しい大和撫子なんです。それだけでも悪い虫がつかないか心配なのですが、彼女の周りには見た目もそれなりに良くて年上のチカラの強い男達がうようよいるんです。」

青年はため息をついた。

「彼女には危なかったら呼んでくれって言ってあるんですが中々呼んでくれないし、俺には治療しろとしか言わないし…やっぱり俺みたいな病気持ちは頼り甲斐がないんでしょうか。」

千景院長は少し考えて青年を見た。

「その者はなにかトラウマを抱えているのではないか?大切な物なり人なりを失った過去などはトラウマになりやすいからな。何より病気を治し安心させることが必要なのではないか?」

青年は目から鱗が落ちたように表情を明るくする。

「そうか!!確かに彼女は空港で別れた時、治ったら…って約束してくれたんだった!!俺が早く身体を治せば問題解決だ!!」

青年は今にも踊り出しそうに歓喜した。

「院長、さすが年の功だ!!登場当時、美少年頭巾と呼ばれた俺が鍼を使うあいつや龍に乗るあいつに負けるはずがない!!」

院長は苦笑いして頷く。

「年の功は余計じゃ。念のために翔子先生のスケジュールを横流ししてやろう。その彼女とやらはうちの翔子先生なんじゃろ?ただし邪な気持ちで近づくと痛い目にあうから気を付けるがよい。それから…。」

千景院長は小声で囁いた。

「スケジュールを横流ししたことは内密にな!!」

青年は院長の処方した薬を手に意気揚々と帰っていった。

今日もカルラ心療内科は忙しい、迷える子羊達を導くために…。
院長がスケジュールを横流ししたことが翔子先生にバレたかどうかは誰も知らない。

(終)