- 冬樹「み、魅冬さま・・・」
- ナレーション「魅冬は、据わった眼つきで、キッと冬樹を睨み付けた。」
- 魅冬「冬樹さんっ!!」
- 冬樹「はっはいっ!(ひ〜、魅冬様ってば、すっかり出来上がっている・・・)」
- 魅冬「酒宴の景気づけに、一曲歌ってください。私が許します。」
- 冬樹「え、ええっ!!」
- 千景「・・・ほう、それもそうだ、そうとなれば、ちょうどいい、蔵にしまっておいた、アレを持ってこようかの。」
- ナレーション「と、席を外した千景は、しばらくするとカラオケセット1式を持って現れた。」
- 魅冬「まあ、素敵ですわ。」
- ナレーション「と、魅冬は、にっこりと天使のような微笑をして、冬樹にマイクを差し出した。」
- 冬樹「あ、あの・・・(汗)」
- 魅冬「そうねえ、曲は何がいいかしらね?(と、既に、選曲に余念のない様子・・・)」
- ナレーション「カラオケセットがしまってあった扇家の蔵とは!?そもそも酒宴会場はどこなのだ!?という質問は尋ねても無駄である。ここは人外の集う場所・・・」
- 剣持「冬樹だったらやはり「BRAND NEW HEART」ですかねえ?(どうやらからかいモードが復活したらしい)」
- ナレーション「説明しよう。「BRAND NEW HEART」。かの昔OVAになった仙台編で冬樹が歌っていた挿入歌である」
- 錦織「ああ・・・あのきらきらしい曲か・・・いい曲だがありゃあ大声で愛の告白をしてるのと同じだからなあ、本人の目の前では恥ずかしいんじゃないか?」
- 魅冬「あら・・・・でもいいわ・・・・。冬樹さん、良かったら歌って下さる?(とろけるような瞳で冬樹を見つめる)」
- 冬樹「あ・・・・はい。魅冬様の御為ならば・・・(赤面する)」
- 剣持「結局いちゃつきたかったんですか(汗)。でもあの歌は冬樹というよりは近江君のイメージでしたねえ・・・近江君、大丈夫ですか?」
- ナレーション「その頃近江は、すっかり酔いつぶれていた」
- 舞子「近江くーーん。カラオケだってよー。滅多にみんなの歌なんて聞けるもんじゃないから起きた方がいいよー」
- 剣持「いっそ、魅冬も冬樹も、近江君も舞子さんもデュエットしたらいかがです?あなたたちも(と辰王・千尋をみる)」
- 錦織「・・・・・・そうしてお前は翔子さんとデュエットか?」
- 千景「剣持!酔った勢いでわしの孫にからむのは許さんぞ(睨みつける)。それよりそこのふたり!(魅冬・冬樹)見つめ合って花飛ばしてるのなら、わしが一番手じゃ!(とマイクを奪い取る)」
- 翔子「おばあちゃんてば・・・(色んな意味で赤面)」
- 舞子「いぇ〜〜いっ♪よっ!おばあちゃんっ」
- ナレーション「扇千景。迦楼羅神教37代目教主。その歌声は天と地に朗々とくまなく響き渡った。上手い、という域を超えて何やら荘厳ですらあった・・・」
- 舞子「おばあちゃん、お見事!次は翔ちゃん、一緒に歌おう♪(とマイクを渡す)」
- 翔子「ええっ!?(と言いつつもマイクを受けとって歌いはじめる)」
- ナレーション「申し分なしに双子は歌が上手かった。いっそ芸能界へ入ったらどうか、とすら感じさせる。おまけに歌う姿は実にかわいい。自然と彼女たちに男性陣の視線が集まる」
- 近江「か・わいい・・・。」
- 剣持「ほう。(にやりと近江をながめる。)」
- 錦織「目つきがいやらしいぞ。剣持。」
- ナレーション「起き抜けのため、つい本音が口を滑って出た少年をからかうのが楽しそうな剣持であった」
- 千景「さすがわしの孫じゃ。主役の面子を見せつけてくれるわ(満足そう)」
- 舞子「そりゃあおばあちゃんの孫だもん!」
- 魅冬「悔しいけれどお見事だわ(^^)」
- 舞子「次は誰が歌う?剣持さん?」
- 剣持「辰王はどうです?「俺ら妖気なかしまし息子」とか」
- 辰王「・・・・・・何だ?それは」
- 剣持「とりあえず一曲どうです。おふたりで(千尋を見て)」
- ナレーション「マイクを付きつける剣持。楽しそうだ」
- 剣持「あっ、宿儺の奥深い山の中に住んでいて、流行の歌にうとくても大丈夫!ほら、「般若心経」というのもちゃんと入ってますよ(^^)。歌って下さい」
- ナレーション「これは実話である。「般若心経」はカラオケBOXにちゃんと入っている。気分の滅入りたい人におすすめである」
- 効果「ぽくぽくぽくぽく(注:木魚の音)」
- ナレーション「木魚の音と共にみょーーーに、ゆっくりとしたリズムが流れ出す・・・・表示画面に般若心経の歌詞(?)が出るのだ。これは怖い。薄暗いところで歌うべきではない」
- 効果「(バックコーラス………?)かんじざい、ぼーざー、ぎょうしんはんにゃーーはらみったーー」
- 千景「なんだか辛気臭くなってきた気がするのじゃが・・・」
- 辰王「(ふるふると震えだし)・・・・・・・死繰人・・・・この俺をここまでおちょくるとはいい度胸だな・・・・・」
- ナレーション「でも辰王とデュエット………(はぁと)な時点で全てのことが問題ではなくなっている千尋であった。」
- 真奈美「まったくこの位で・・(と、頭を押さえつつつぎの曲を入れる・・・)」
- 近江「母さん、何を歌うんだ?」
- 真奈美「テレサ・テンとかどう?なんて、あなたが歌いなさいな。近江」
- 近江「テレサ・テン・・・合いすぎ・・・じゃなくて俺が!?」
- 舞子「あーっ、いいねえ。近江君ならTM○evolutionなんて似合うよねえ」
- 真奈美「いいとこお見せなさいな。近江(小声で息子に笑いかける)」
- 近江「・・・・母さん!」
- 辰王「いいや、近江だけにかっこつけさせはせんぞ!」
- 翔子「・・・・もうキャラクター崩壊してるわね。この兄弟」
- 剣持「辰王。歌いますか?般若心経」
- 辰王「しつこいぞ、死繰人!大体貴様はなぜ歌わん」
- 剣持「歌って欲しいですか?(にっこり)」
- 千景「こりゃ、司!いい加減にせぬか!」
- ナレーション「突如として阿修羅の形相を見せた千景に、マジでビビる剣持」
- 千景「あの時のこと、忘れたとは言わせぬぞ!」
- ナレーション「剣持司、陰陽師。彼は過去にNHK素人のど自慢で、あまりのひどさに席を立とうとした審査員及観客に針を打ち、無理やり最後まで聞かせたという過去を持つ。」
- 錦織「お前・・・音痴だったのか・・・・」
- 剣持「では!リクエストにおこたえして・・・・っ。」
- 舞子「いけいけー。」
- 近江「け………、剣持さん………。ちょっと止めておいた方が………(汗)」
- 錦織「さては強制的に聴かされたことがあったんだな?(汗)」
- 近江「・・・・・・うっ・・・(どこか蒼ざめる)」
- 舞子「えーッ、聴きたい!」
- 近江「!ば、ばか!なんてことを・・・・!!(とますます蒼ざめて舞子を止めようとするが無論おそい)」
- ナレーション「剣持の目が好物を眼前にした獣のように光った」
- 剣持「それでは・・・・(とマイクを取り上げやけに嬉しそうに鍼をちらつかせる。完璧に出来あがっている)」
- ナレーション「ところが!!!」
- 効果「ゴスッ・・・・・・・・・!!」
- 千景「ええい、悪ふざけもそろそろいい加減にせぬか!」
- 翔子「(あんど舞子)おばあちゃん!!!!」
- ナレーション「・・・・・・静寂・・・・・・」
- 錦織「剣持?沈没したか?10、9、8・・・・(とカウントをはじめる)」
- 辰王「ふん。自業自得だ」
- 千尋「コレ(剣持)をどこかにやってしまえ!」
- 魅冬「静かになったわね」
- 冬樹「なりましたね」
- ナレーション「遠くで見つめ合っていたふたりも我にかえったようだ」
- 錦織「(皆けっこう無情だな)汗」
- ナレーション「口には出せない思いを抱えつつ最後までカウントしおわる錦織」
- 真奈美「千尋ちゃんがいらついてるのは洋江とデュエットできなかったからなの?(優しく微笑む)」
- 舞子「うわあ・・・・剣持さん起きないよ(汗)。おばあちゃんの圧勝だ」
- 錦織「お見事!(汗)(千景の腕を大きくあげる)」
- 効果「カンカンカン!(どこからか終了ゴングが・・・)」
- 翔子「(さすがに慌てて)剣持さん大丈夫ですか!?(手当をしようとする)」
- ナレーション「横たわる剣持にそっと手をかざす翔子」
- 翔子「ヒフミヨイツムナナヤココトオ・・・・フルヘユラユラ、ユラユラトフルヘ・・・」
- 剣持「う………、うう………」
- ナレーション「剣持の額に汗が浮かんだ。」
- 舞子「おばあちゃん・・・・ちょっとやりすぎだよ」
- 千景「手加減はしたのじゃぞ?こいつにはこれくらいがちょうどいいと思ったのじゃが・・・」
- 近江「目を覚ましませんね。」
- 舞子「手加減してなきゃ、死んでるもんねえ(汗)」
- ナレーション「一瞬、「お前の拳もだ!お前の拳も!」と思ったが、口には無論しない近江であった。」
- 剣持「はっ・・・・(起きあがる)生きていたようですね」
- 翔子「よかった・・・一二三呪文が効いたようですね。」
- 錦織「おお、生きてた。生きてた。よかったな剣持。」
- 近江「生きてたようですけど・・・体どっかおかしなとこは無いですか?」
- 錦織「おかしいのは元からだろう。」
- 辰王「近江・・・師は選べよ・・・」
- 剣持「近江君、優しいお言葉ですね。それに比べてあなた方は冷たい(ちょっと機嫌悪い)」
- 錦織「じゃあ、お前。俺たちが優しい言葉をかけたら、無条件で嬉しいか?」
- 辰王「(にやり)死繰人・・・大丈夫か?もっと横になっていた方がいいぞ。」
- 剣持「う゛っ・・・・・」
- 冬樹「(じゃあ俺も)死繰人、どこか痛むところはないか?」
- 剣持「う゛う゛っ゛・・・」
- ナレーション「男たちは今までのお返し、とばかり外見はとてもとても優しく気遣うように、言葉をかける。しかして剣持は顔面蒼白である。もはやいつものようににっこりと受け流すことが出来ない。」
- 剣持「・・・・わ、わかりました。よくわかりました・・・」
- 千景「ははは。どうせ言われるのなら若い娘の方がいいじゃろうな。ま、いい薬になったじゃろう司」
- 魅冬「冬樹さん、嘘でもその笑顔が他の人に向けられているのを見るのは、ちょっと辛いわ・・・」
- ナレーション「いきなり乙女チックになる魅冬である。」
- 冬樹「魅冬様・・・俺のすべてはあなたのものです・・・。」
- 舞子「あーっ、もう。またラブラブ状態に入る!」
- 翔子「これは・・・剣持さん、あとが怖いわね・・・・また一波乱ありそうだわ」
- ナレーション「剣持が虎視眈々とリターンマッチを狙い始めたやもしれない、と案じる翔子であった。」
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